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UT膠原病クラブ

UT(University of Tokyo)膠原病クラブでは、膠原病診療に関するTipsや当科の研究活動からわかってきた膠原病に関するTopicsなどの情報を紹介していきます。また当科カンファランスで行っているJournal Clubで取り上げた論文の紹介なども行います。

2019年度

2019年10月21日

Valentini G, et al. Vasodialators and low-dose acetylsalicylic acid are associated with a lower incidence of distinct primary myocardial disease manifestations in systemic sclerosis: results of the DeSScipher inception cohort study.
Ann Rheum Dis. 2019. Epub ahead.

DeSScipher-EUSTARセンターに2012年12月から2015年11月に受診したSSc患者を対象とした。心筋障害(心室性不整脈、異常Q波、心ブロック、ペースメーカー導入、左心機能低下(EF<55%)、心不全、心突然死)の発症に関する因子を解析した。
601例のSSc患者のうち、血管拡張薬(Ca拮抗薬、ACE阻害薬、ARB)の使用群153例、非使用群448例であった。
COX回帰分析では、血管拡張薬使用群では心室性不整脈が有意に少なかった(HR 0.28 (0.09-0.90), p=0.03)。また低用量アスピリン使用群は心ブロック・Q波・ペースメーカー導入が有意に少なかった(HR 0.46(0.24-0.87), p=0.02)。高疾患活動性(EScSG activity index 3以上)は、左心機能低下、心不全の増加と関連した(HR 3.71(1.02-13.42), p=0.05)。

ひとこと:心筋障害の原因のひとつとしてmicrovascular ischemiaが寄与すると考えられており、血管拡張薬によるmicrovascular ischemiaの治療は左心機能障害の予防になると考えられてきました(Desai CS, et al. Curr Opin Rheumatol. 2011. 23:545-554.)。EUSTARからの2010年の報告では左心収縮機能障害はSScの5.4%でみられ、リスクとして男性、高齢、指尖潰瘍、筋炎が挙げられる一方、Ca拮抗薬使用はリスクを低下させることが報告されています(Allanore Y, et al. ARD. 2010)。今回の報告とあわせて、心機能低下リスクの高い症例では血管拡張薬の積極的使用が考慮されるでしょう。

2019年10月21日

Mariampillai K, et al. Development of a New Classification System for Idiopathic Inflammatory Myopathies Based on Clinical Manifestations and Myositis-Specific Autoantibodies. JAMA Neurol. 2018. 75:1528-1537.

フランスの筋炎コホート(French myositis network)にて260名のIIM患者について、41項目の患者情報・臨床情報を用いてクラスター解析を行い、4つのカテゴリーに分類した。DM, ASS, IMNM, IBMの4群に分類された。筋生検を除いた臨床項目で分類器を作成したところ、DM rashの有無(あればDM), ARS抗体陽性(あればARS), finger flexor scores ≦3(該当すればIBM)で各群に分類すると感度77%, 特異度92%であった。

Cluster 1:IBM (72 of 77 patients [93.5%]).
Cluster 2 (n = 91): IMNM (53 of 91 [58.2%]), women, high creatine phosphokinase levels, necrosis without inflammation, and anti–SRP or anti–HMGCR antibodies.
Cluster 3 (n = 52): DM (43 of 52 [82.7%]) dermatomyositis rash and anti-Mi2, anti–MDA5, anti–TIF1γ antibodies
Cluster 4 (n = 40): ASS (36 of 40 [90.0%]) anti-Jo1 or anti-PL7 antibodies

ひとこと:ACR/EULAR 2017criteriaではIIMはDM, PM, IBMの3種類にわかれて記載されています。今回の検討でIIMの分類としては上記4種のクラスターにわかれました。Cluster 2は58.2%がIMNM, 23.1%がPMの診断が混在しており、この点は病理所見で区別が可能かもしれません。

2019年9月30日

Alder S, et al. Risk of relapse after discontinuation of tocilizumab therapy in giant cell arteritis. Rheumatology. 2019. 58:1639-1643.

RCT (Villiger PM, et al. Lancet. 2016. 387:1921-1927)においてGCAにTCZ投与を行ったうえで、52週以降TCZを中止した17例のフォローアップ(平均フォロー期間28.1ヵ月)。8例で再燃し、平均6.3ヵ月(2-14)であった。再燃例は年齢が低く、治療開始前のMRAでmural enhancementがより多い箇所でみられていた。MRAの壁造影シグナルの治療前後の変化については、寛解を維持している患者でも持続しており、特に再燃と関連がなかった。再燃と関連するバイオマーカーも同定されなかった。

ひとこと:GCAに対するTCZですが、PSL等の維持療法がない場合には中止すると約半数は再燃がみられた結果でした。最近のARD letterで、TCZ投与中止後の再燃リスクとして、TCZ投与中にIL-6が上昇したあと、低下傾向が見られない場合、早期の再燃リスクがあるという報告がありました(Berger CT, et al. Ann Rheum Dis. 2019.)。いずれのケースでも再燃率は約50〜60%であり、TCZ継続の必要性は高いと考えられています。

2019年9月20日

Karpouzas GA, et al. Impact of cumulative inflammation, cardiac risk factors and medication exposure on coronary atherosclerosis progression in rheumatoid arthritis.
Arthritis Rheumatol. 2019. Epub ahead.

101例のRA患者について、baselineと83±3.6ヵ月後のcoronary CTを撮像し、動脈硬化病変の進行と関連する因子を検討した。48%の患者でプラークが増加しており、進行のリスク因子として高齢、積算炎症反応高値、PSL積算量が挙がった。Coronary artery calcium (CAC)の進行リスクとして、高齢、肥満、高血圧、積算炎症反応高値、PSL積算量が挙がった。生物学的製剤の使用期間は、炎症反応、プレドニゾロン量、スタチン使用とは独立に非石灰化プラーク進展を抑制した。

ひとこと:RAは動脈硬化のrisk factorとして重要です。特に高疾患活動性はCVD riskとされていますが(Arts EE, et al. Ann Rheum Dis. 76:1693-1699. 2017)、本研究でもCRPの持続高値は冠動脈石灰化プラーク進展のリスクとして同定されています。またcsDMARDにはプラーク進展抑制効果は明らかではありませんでしたが、bDMARDによるプラーク進展抑制効果が同定されました。また、RA患者に対するスタチンの積極的な使用は冠動脈硬化抑制に望ましいと思われます。


2019年7月8日

Distler O, et al. Nintedanib for systemic sclerosis-associated interstitial lung disease. N Eng L med. 2019. 380:2518-2528.

P:SSc発症7年以内のSSc-ILD (肺野10%以上の間質影を有する)
I:Nintedanib 150mg 1日2回内服
C:プラセボ
O: 52週のΔFVC (mL)

576症例をNintedanib群とプラセボ群に1:1で無作為に割り付けた。51.9%がdcSSc, 48.8%でMMFが投与されていた。
 52週のFVC低下量はNintedanib群で-52.4 mLだったのに対して、プラセボ群で-93.3mL と有意にNintedanib群で低下が少なかった(p=0.04)。一方、副次エンドポイントであるmRSSやSGRQ(呼吸に関する質問紙)には両群で有意差は見られなかった。
 主な有害事象として、Nintedanib群で75.7%に下痢がみられた。

ひとこと:MMFが約半数で導入されているSSc-ILDに対するNintedanibの有効性を検証した研究です。%FVCで比較すると、Nintedanib群-1.4±0.4%, プラセボ群 -2.6±0.4% で有意差がつきません。DLcoに関しても、Nintedanib群 -3.21±0.54%, プラセボ群 -2.77±0.54%とこちらも差がありません。SSc-ILDでは1年間でFVC -10%, DLco -15%が予後不良として治療対象と考えられるので、MMFでILDの進行がある程度抑えられている集団を対象とした治験という位置づけだと考えられますが、Nintedanib群の改善効果は有意ではあるもののわずかな印象です。

2019年7月1日

Spielmann L, et al. Anti-Ku syndrome with elevated CK and anti-Ku syndrome with anti-dsDNA are two distinct entities with different outcomes.
Ann Rhuem Dis. 2018. Epub ahead.

抗Ku抗体陽性患者42例に対して臨床指標を基にmultiple correspondence analysis(多重コレスポンデンス分析、質的変数で行ったPCAだそうです)により、3クラスターに患者を分類した。クラスター1はCPK上昇、ILD合併が多く、一方でクラスター3は糸球体腎炎、血球減少、紅斑がみられ抗dsDNA抗体が陽性であった。以上より、抗Ku抗体症候群は、CPK上昇を伴うものと、抗dsDNA抗体上昇を伴うものに分けられた。

ひとこと:CPK+ILDを伴う患者はIIMまたはIIM+SScのオーバーラップ症候群、抗dsDNA抗体上昇を伴う患者はSLEに分類され、同じ抗Ku抗体が陽性にもかかわらず病状が異なります。抗Ku抗体陽性患者の経過や予後は情報が少ないですが、ILDが治療抵抗性であるという報告もあります(Rigolet A, et al. Medicine. 2012;91:95-102)。

2019年6月17日

Smolen S, et al. Upadacitinib as monotherapy in patients with active rheumatoid arthritis and inadequate response to methotrexate (SELECT-MONOTERAPY): a randomised, placebo-controlled, double-blind phase 3 study. Lancet. 393:2303-2311. 2019.

P:MTX単剤で無効なRA患者
I: Upadacitinib(Upa) 15mg, 30mg/day
C:MTX継続
O: 14週でのACR20, DAS28-CRP低疾患活動性達成率

648例のRAをrandomにMTX単剤群、Upa 15mg単剤群、Upa 30mg単剤群に割り付けた。14週でのACR20達成率は、MTX群41%, Upa15mg群68%, Upa 30mg群 71%っとUpa投与群で有意に高かった。DAS28-CRP低疾患活動性達成率はMTX単剤群19%, Upa 15mg群45%, Upa 30mg群53%とUpa投与群で有意に高かった。

副作用については、各群で有意差はなく、帯状疱疹はUpa30mg群で3%と高い傾向があった。

ひとこと:現在のRA治療ガイドラインはMTXをアンカードラッグとして位置付けていますが、本研究はUpa単剤も選択肢として考えうるというエビデンスです。より長期の成績、構造的破壊抑制のエビデンスが求められます。

2019年6月20日

Xie W, et al. Impact of Janus kinase inhibitors on risk of cardiovascular events in patients with rheumatoid arthritis: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials.
Ann Rheum Dis. 2019 epub ahead

Jak阻害薬を投与されたRA患者の心血管系イベント(CVE)リスクについて、26のRCTのmeta-analysisを行った。すべてのCVEリスクはJAKi全体 OR 1.04(0.61-1.76)、Tofa OR 0.63(0.26-1.54), Bari OR 1.21(0.51-2.83), Upa OR 3.29(0.59-18.44)と有意なリスクではなかった。major adverse cardiovascular events (MACEs)/venous thromboembolism events (VTEs)についても、MACEs (OR 0.80 (0.36 to 1.75)) or VTEs (OR 1.16 (0.48 to 2.81))と有意なリスク上昇は認められなかった。

Baricitinib 2mgは4mgと比較して、すべてのCVE発症についてOR 0.19(0.04-0.88), p=0.03と有意に安全であった。Tofa, Upaについてのdose-dependencyは明らかではなかった。

ひとこと:Jak阻害約薬全体でのCVEリスクは短期的には上昇がないようですが、Baricitinib 4mgについては注意が必要と考えられます。関連する報告として、TNFiとTofa投与中のRA患者におけるVTE発症リスクを比較した報告がありますが、有意差はなかったとされています(Desai RJ, et al. Arthritis Rheumatol. 71:892. 2019)。

2019年5月20日

Sabbage S, et al. Anti-Ro52 autoantibodies are associated with interstitial lung disease and more severe disease in patients with juvenile myositis.
Ann Rheum Dis. Epub ahead.

302例の小児筋炎患者の抗Ro52抗体陽性例を検討したところ、14%で陽性であった。特に抗ARS抗体, 抗MDA5抗体陽性例で抗Ro52抗体陽性率が高かった。抗Ro52抗体陽性例では、間質性肺炎の合併率が高く、また慢性化しやすく寛解率は低かった。

ひとこと:Ro52はTRIM21との名称もあり、E3 ligase活性化があります。ユビキチン化の標的としてIRF3, IRF7などの転写因子があり、インターフェロン産生の制御を行っていると考えられています(Oke V, et al. J Autoimmune. 2012)。Ro52抗体陽性例でのILD経過について、IFN pathwayの活性化が影響している可能性があります。

2019年5月28日

Mirouse A, et al. Long term outcome of ustekinumab therapy for Behcet’s disease. Arthritis Rheumatol. Epub ahead. 2019

口腔粘膜潰瘍を有するBehcet病患者30例にIL12/23阻害薬ustekinumabを投与した。Week 12, 24における奏効率は60.0%, 89.9%であった。26例が12ヵ月後もustekinumabを継続しており、3例がBD再燃、1例が副作用で中止していた。

有害事象は7例でみられたが、重篤な副作用はみられなかった。

ひとこと:Behcht病のrisk遺伝子としてIL23R, Il12RB2があり(Nat Genetics. 2010.), Il12/23がBDの病態に関連していると考えられています。

van Mulligen E, et al. Gradual tapering TNF inhibitors versus conventional synthetic DMARDs after achieving controlled disease in patients with rheumatoid arthritis: first-year results of the randomized controlled TARA study.
Ann Rheum Dis. 78:746-753.2019

P:DAS28-ESR≦2.4, SJC≦1の、TNF inh + csDMARD投与中のRA患者
I:TNF inh減量・中止
C:csDMARDs減量・中止
O:1年後の再燃率

189例(csDMARD 94例, TNF inh 95例)で、それぞれの薬剤を3か月ごとに半量、中止した。再燃率は9ヶ月までは差がなかったが、12ヵ月でTapering csDMARD群43%, Tapering TNF inh群33%と有意ではないが差が見られた(p=0.17)。

ひとこと:EULAR recommendationにも2016年版には、生物学的製剤の減量中止についての記載が追加されています。TNF阻害薬の減量については、複数の先行研究があり、再燃率は51%~76%と幅がありました。本研究ではTNF inh中止は”not superior to csDMARD tapering”という結果でしたので、TNF inh減量・中止の選択肢が現実的と結論付けられていますが、再燃率は低いとは言えない印象があります。

2019年4月8日

Tsang-A-Sjoe MWP, et al. The relationship between remission and health-related quality of life in a cohort of SLE patients.
Rheumatology. 58:628-635, 2019.

SLE患者におけるremissionとhealth-related QoL (HRQoL)の関連を調べた縦断的観察研究。SLE 154名を対象に2年間の観察を行った。RemissionはDORISに基づき定義され、HRQoLはSF36で評価された。ベースラインではremission on therapy 18.2%, off therapy 27.3%であった。Remissionを達成しているSLE患者は、達成していない患者と比較してSF36の各項目の数値が高かった。SF36のサマリースコアであるphysical component score (PCS)はremissionを達成している患者で有意に高い一方で、mental component score (MCS)はremission, no remissionに関係がみられなかった。

ひとこと:2019 update EULAR recommendationsにおいても、SLEの治療目標のひとつとして、HRQoLの最適化が挙げられています。SLEのtreat-to-target approachについてremissionを目標とした治療は身体的側面のHRQoLの改善と関連していることがわかり、remissionは治療目標として妥当と考えられると議論されています。PCSはno remissionの平均が36.0に対して、remission at al visitの場合には44.8であり、no remissionの場合の低値がめだちます。一方で精神的側面のHRQoLはremission 46.1, no remission 46.8と差がみられないのは、変動が少ないからかもしれません (population-matched controlでは50±10との記載があります)。

2019年4月25日

Sparks JA, et al. Rheumatoid arthritis disease activity predicting incident clinically-apparent RA-associated interstitial lung disease: A prospective cohort study.
Arthritis Rheumatology. 2019. Epub ahead.

Brigham RA Sequential Study (BRASS)のno known RA-ILD 1419例を対象とした前向きコホート研究。年齢は55.8歳(SD 14.2), 68.6%がseropositiveであった。平均8.9年(SD 4.2)で、85例にILDが発症した。RAの疾患活動性が寛解の場合を1としたときに、ILD発症のHRは低疾患活動性 1.41(0.61-3.28), 中疾患活動性 2.08(1.06-4.05), 高疾患活動性 3.48(1.64-7.38)と疾患活動性に比例して、ILD発症にリスクが上昇した。この結果はMTX, ステロイド, 骨びらん, リウマトイド結節の有無を調整しても同様であった。

ひとこと:RA患者の肺にはシトルリン化抗原が発現し、ACPA産生のfocusの一つとして想定されています。RAの活動性が高い患者では、シトルリン化抗原に対するT細胞性、B細胞性免疫応答が制御されておらず、肺でも自己免疫反応による炎症が生じるのかもしれません。4/22の抄読会でとりあげたAbataceptがRA-ILD患者でも安全に使用可能という論文(Femandez-Diaz C, et al. Semin Arthritis Rheum. 2018)の内容ともリンクすると思います。

2019年3月4日

Jones RB, et al. Mycophenolate mofetil versus cyclophosphamide for remission induction in ANCA-associated vasculitis: a randomized, non-inferiority trial.
Ann Rheum Dis. 78:399-405. 2019

P: 新規発症のANCA関連血管炎患者
I:MMF 2g/day(4週後に3gまで増量可能)
C:IVCY(15mg/kg, 2-3週おき)
O: 6か月後の寛解率(非劣勢)

AAV 140例(PR3ANCA 82, MPOANCA 53)を対象としたopen label試験。6か月後の寛解はMMF群 67%, IVCY群61%と非劣勢が証明された。また寛解までの期間にも両群で差がなかった。寛解後はAZPに変更して、PSLは5mgで維持するプロトコールであるが、再発までの期間がMMF群でIVCY群と比較して有意に早かった。MMF群の再発のリスクとしてPR3ANCA陽性が挙がった。重篤な有害事象はMMF群26%, IVCY群17%であるが有意差はなかった。

ひとこと:MMFによるAAVのinductionについてのevidenceです。重篤な症例は含まれていませんが、IVCY, RTXが使いにくい症例でも、特にMPO-ANCA陽性例ではMMFによる寛解導入が選択されてよいと思います。維持については、MMF<AZP(JAMA 2010;304:2381)との試験結果もありますので、RTXなど別の戦略が必要となるでしょう。

2019年3月18日

Burggraaf B, et al. Effect of a treat-to-target intervention of cardiovascular risk factors on subclinical and clinical atherosclerosis in rheumatoid arthritis: a randomised clinical trial. Ann Rheum Dis. 2019 Mar;78(3):335-341.

P: 70歳以下のRA、CVD既往なし
I:血圧、血糖、脂質、喫煙を目標値以下にコントロール(treat-to-target)
C:Usual care
O:5年後のcIMT

 RA患者をusual care (n=158), treat-to-target (n=162)の1:1に割り付けしている。疾患活動性は平均2.4~2.6と寛解を維持している群。両群で血圧、血糖に差はなかったが、LDL-Cはtreat-to-target群で有意に低かった。cIMTはusual care群0.628±0.134, treat-to-target群 0.602±0.108 (p=0.028)とtreat-to-target群で進展が少なかった。5年間のCVD eventはusual care群7例に対して、treat-to-target群2例と有意に少なかった。

ひとこと:RAはCVD riskとされています。Population based studyではスタチン使用はCVDリスクを下げる研究はありましたが、多因子への介入研究ははじめてです。本研究のCVD event率は4.7%であり、過去のRA CVD riskの報告(10%程度)に比べて低い傾向がありました。おそらくRA疾患活動性が過去の研究よりも低い群なので、CVD riskが下がっている可能性があります。そのなかでも動脈硬化リスクの厳密なコントロールはさらにCVD riskを低下させる結果でした。

2018年度

東大アレルギーリウマチ内科カンファランスで開催されたJournal Clubで取り上げた論文の紹介です。

2019年2月26日

Legge A, et al. Evaluating the properties of a frailty index and its association with mortality risk among patients with systemic lupus erythematosus
Arthritis Rheumatology. Online ahead.

SLICC-FI(frailty index)は48項目にわたる健康関連欠損、具体的には臓器障害、疾患活動性、合併症、機能的障害などにより構成される指標である(12項目で問題があるとすると、12/48=0.25点となる)。1683例のSLE患者において、base lineにおけるSLICC-FIは、baselineのSDIと弱い相関があった(R=0.262, p<0.0001)。baselineのSLICC-FIが高いことは、年齢、性別、ステロイド使用、人種、baseline SDIを調整後において、高い死亡のリスクであった(FI 0.05上昇するごとに、HR 1.59 (1.35-1.87))。

ひところ:SLE患者の罹病期間がbaselineで1年程度、その後7年程度のフォローアップがなされています。発症早期の段階から使用可能な生命予後予測モデルといえそうです。

2019年2月26日

Moller-Bisgaard S, et al. Effect of Magnetic Resonance Imaging vs Conventional Treat-to-Target Strategies on Disease Activity Remission and Radiographic Progression in Rheumatoid Arthritis: The IMAGINE-RA Randomized Clinical Trial. JAMA. 321(5):461-472.

P: DAS28-CRP<3.2以下、SJ=0のRA患者
I: MRI-guided T2T (MRIにおけるbone marrow edemaをなくすことが目標)
C: DAS28-CRPに基づいたconventional T2T
O: 2年後のDAS28-CRP<2.6(寛解), radiological no progression

 200例のRAを対象とした1:1のRCT。Primary endpointであるDAS寛解率はconv vs MRIで85% vs 88%、radiological no progressionはconv vs MRIで66% vs 62%と有意差がなかった。
 治療内容については、conv群と比較してMRI群でbDMARD使用率が高かった(2 vs 46%)。MRI群の17%でsevere AEがみられ、conv群の6%と比して有意に多かった。

ひとこと:同じ号のJAMAでAletaha D, Smolen JSのEditorialが出ています。本研究の意義として、US, MRI等の画像検査はRAの診断には有用だが、経過観察には不適であると結論つけています。そのほかにも、現在の臨床指標に基づくT2Tの妥当性、csDMARD単剤でも多くの患者でno progressionを達成可能であり、現在の治療ガイドラインの妥当性(csDMARD無効例のみbDMARDへswitch)を示唆しているとの記載がありました。

2019年2月18日

Avina-Zubieta JA, et al. Risk of venous thromboembolism in ankylosing spondylitis: a general population-based study.
Ann Rheum Dis. 2019; 0:1-6

British Columbia州のヘルスケアデータベースを基に、AS患者のDVT, PEのリスクを検討した。7190例のAS患者のうち、35例がPE, 47例がDVTを発症し、1000人年あたりの発症はAS患者でPE 0.79, DVT 1.06, VTE 1.56 (健常人 0.40, 0.50, 0.77)と多かった。
ASにおけるHRはPE 1.36 (0.92-1.99), DVT 1.61 (1.16-2.26), VTE 1.53 (1.16-2.01)と上昇し、特に発症1年目におけるHRはPE 2.28(0.87-9.62), DVT 2.20(0.80-6.03), VTE 2.10(0.88-4.99)と特に高かった。

ひとこと:ASではNSAID内服者が多く、DVTリスクを高めているかもしれません(OAに対するNSAID使用のDVT risk上昇については、Lee T, et al. Rheumatology. 2016; 55:1099.参照。HR 1.4程度の上昇)。

2019年2月12日

Jesus D, et al. Derivation and validation of the SLE Disease Activity Score (SLE-DAS): a new SLE continuous measure with high sensitivity for changes in disease activity.
Ann Rheum Dis. 2019 Jan 9

 SLEの疾患活動性評価として多変量線形回帰モデルを用いてSLE-DASモデルを作成した。SLE-DASは17 itemsからなり、PGA(r=0.875), SLEDAI2K(r=0.943)と強く相関した。ΔSLE-DAS>1.72は改善・悪化をSLEDAI2K(>4点)より感度よく検出した(改善 SLE-DAS vs SLEDAI2K 89.5% vs 47.4%, 悪化 95.5% vs 59.1%)。またdamage accrualについてもSLE-DASのほうがより感度よく予測できた。

ひとこと:SLE-DASはPGAをdependent variableとして作成されています。また、関節炎(arthritisの有無, SJCの数)、蛋白尿、WBC減少, Plt減少がmajor drivers of its increased sensitivityとなっていると解説されています。

2019年1月21日

Gerlag DM, et al. Effects of B-cell directed therapy on the preclinical stage of rheumatoid arthritis: the PRAIRI study.
Ann rheum Dis. 2019;78:179-185.

P: RF, ACPA陽性で(エコー、MRIを含めて)関節炎が明らかではない症例
I: RTX 1000mg
C: プラセボ
O: 関節炎顕在化までの時間

Randomized, double-blind, placebo-control study. 82例(RTX 41, placebo 40)が対象となった。25%の症例がRAを発症するまでの期間は、RTX群での有意な遅延が証明された。
12ヶ月までにRAを発症した割合はRTX群でプラセボと比較して55% (HR 0.45, 0.154-1.322)減少した。BaselineでのESR, 抗citrullinated alpha-enolase抗体の存在がRA発症の予測因子と同定された。

ひとこと:超早期RAにおけるB細胞の重要性が示唆される結果でした。RTXは関節炎発症を遅らせましたが、”drug free remission”, ”cure”には至らない結果で、36週にはプラセボとのRA発症率に差がなくなりました。関節炎予防にはRTX継続投与、またはB細胞ののみではなく、他の因子(T細胞?サイトカイン?) も併せた抑制が必須と思われます。同様のRCTにABTによるAPPIPRA studyがあります。
EULARによるarthalgia suspicious for progression to RA (van Steenbergen HW, et al. ARD. 2017)として7項目(詳細はEULAR参照)が挙げられていますので参考にしてください。

2018年12月17日

Volkmann ER, et al. Short-term progression of interstitial lung disease in systemic sclerosis predicts long-term survival in two independent clinical trial cohort.
Ann Rheum.Dis 2018. Epub ahead

SSC-ILDに対する2つの臨床試験(SLS I, SLS II)の長期経過を解析し、生命予後と生命予後に影響する因子を解析した。生命予後については両試験ともに12年、8年での生存曲線には差がなかった。両試験におけるCox proportional hazard modelにより、生命予後に影響を与える因子として、皮膚硬化(MRSS)、年齢のほかに、%FVC, %DLcoが2年間で低下傾向にあることが同定された。

ひとこと:SLS IはPOCY 1年 vs placebo, SLS IIは MMF 2年 vs POCY 1年での比較試験です。SLS Iの生存者が37%, SLS IIの生存者が約70%という結果からはSSc-ILDの依然厳しい生命予後が分かります。生命予後を改善させる可能性のある治療としては、幹細胞移植が論文中には提唱されています。SLS II終了後は両群の症例でMMFが使用されているため、予後に差がない可能性があり、長期のMMF使用はpromisingかもしれません。

2018年11月12日

Morand EF, et al. Lupus low disease activity state (LLDAS) attainment discriminates responders in a systemic lupus erythematosus trial: post-hoc analysis of the Phase IIb MUSE trial of anifrolumab.
Ann Rheum.Dis 2018. 77:706-713.

P: 活動性のあるSLE
I: Anifrolumab 300mg iv, 1000mg iv 4週ごと
C: プラセボ
O: 52週観察期間中のLLDAS達成率

Anifrolumab(anti-IFN alpha receptor antiobody)投与群ではプラセボ群に比して早期よりLLDASを達成し、52週の段階でLLDAS達成率はプラセボ17%, 300mg群 39%, 1000mg群 28%であった。SRI-4 responderの47%、BILAG-based composite lupus assessment (BICLA)responderの51%のみがLLDASを達成していた。

ひとこと:MUSE trialの元論文は、Furie R, et al Arthritis Rheumatol. 2017.69:376.です。SLEの治験ではベリムマブ以降SRI-4, BICLAがprimary endpointに設定されることが多いですが、より臨床的意義の明らかなendpointが必要と考えられてきています。本論文はpost-hoc解析ですが、長期的な障害や再燃と関連のあるLLDASがendpointとなりうることを示しています。

2018年11月26日

Rovin BH, et al. A randomized, controlled double-blind study comparing the efficacy and safety of dose-ranging voclosporin with placebo in achieving remission in patients with active lupus nephritis (AURA-LV). Kidney Int. 2018. Epub ahead.

P: 活動性のあるループス腎炎(III, IV, V型)
I: MMF2g/day+Voclosporin(VCS) low dose (23.7mg BID), high dose (39.5mg BID)
C: MMF 2g/day+placebo
O:24週での完全寛解率(CRR)

24週でのCRRはプラセボ19.3%, VCS low dose群 32.6%, VCS high dose群 27.3%とlow dose群でプラセボと比較して有意な改善がみられた(p=0.046)。48週でのCPPはプラセボ23.9%, VCS low dose群49.9%, VCS high dose群 39.8%とVCS両群ともプラセボと有意差がついた。
 有害事象として、重篤な有害事象がVSC low dose群で11.2%と高く、主にアジア(バングラデシュ、スリランカ等)において10例の死亡が出た。

ひとこと:VCSは新規カルシニューリン阻害薬で、投与量を固定できるのが特徴です。Multitarget (MMF+Tac)の24週CRRが45.9% (Liu Z, et al. Ann Intern Med. 2015. 162:18-26 )であり、遜色ない結果と思われます。Class Vでの有効性が明確でなかったことは、カルシニューリン阻害薬がT細胞以外にも腎臓podocyteに作用することを考慮すると意外な結果でした。安全性についても注意が必要で、現在Ph3が進行中です。

2018年10月30日

Van Vollenhoven RF, et al. Efficacy and safety of ustekinumab, an IL-12 and IL-23 inhibitor, in patients with active systemic lupus erythematosus: results of a multicenter, double-blind phase 2, randomized, controlled study.
Lancet. 2018. 392:1330-1339.

P: 活動性のあるSLE
I: ustekinumab s.c. (体重別初期量(290〜520mg)のあと、8週ごと90mg)
C: プラセボ
O: 24週後のSRI-4達成率

24週でのSRI-4達成率はUstekinumab群 62%, プラセボ群33%と有意に改善していた。関節炎、皮疹、再燃率(BILAG flare)も、ustekinumab群で有意に改善していた。マイクロアレイデータから計算されたIFN scoreにより、IFN-high群、low群に群分けした解析では、IFN-low ustekinumab群でのSRI-4達成率は81.8%であり、ustekinumabはIFN low群でより有効である可能性があった。

ひとこと:SLEの病態に関与しているとされるTfh-Th1 like cellの分化にはIL-12を介したSTAT1, STAT4の活性化が関与しているとの報告があります(Ma X , Nakayamada S et al. ARD 2018. 77:1354)。

Watanabe H, et al. Association between reappearance of myeloperoxidase-antineutrophil cytoplasmic antibody and relapse in antineutrophil cytoplasmic antibody-associated vasculitis.
Arthritis Rheum. 2018. 70:1626-1633.

MPO-ANCA陽性例で治療開始半年以内に寛解を達成した271症例(MPA 183, GPA 34, EGPA 15)を対象としたコホート研究。MPO-ANCAを経時的に2年間測定し、再燃例(case)と寛解維持例(control)を比較した。
 72%の症例で6ヶ月以内にMPO-ANCAは陰性化し、うち40%で再度陽転化(“reappearance”)がみられた。”reappearance”は、再燃例で有意に高く、再燃のリスクが高い群と考えられた(76% vs 12%, OR 26.2)。
ひとこと:ANCA titerの陽性残存や再上昇の臨床的な意義については、意見がわかれている点です。Meta analysis(Tomasson G, et al. Rheumatology. 2012. 51:100)の結果ではANCA陽性残存や上昇は、将来的な再燃の”moderate predictive value”(陽性尤度比 2前後)があるとされています。

2018年9月25日

Md Yusof MY, et al. Prediction of autoimmune connective tissue disease in an at-risk cohort: prognostic value of a novel two-score system for interferon status.
Ann Rheum Dis. 2018. 77:1432

At risk to autoimmune(AI)-CTD(ANA陽性、SLE 分類基準1項目以下、症状12ヶ月以内、無治療)の118症例で、血液・皮膚生検検体のIFN scoreを測定し、12か月後の予後予測を行った。
 16%(19例/118)でAI-CTD発症(SLE 14, SS 5)した。AI-CTDを発症した患者のベースラインでのIFN scoreは、発症しなかった症例と比較して、IFN score A 2.94(fold increase 1.14-7.54), IFN score B 3.22(fold increase1.74-5.95)と上昇がみられた。皮膚ではIFN score Aのほうが高値であった。多変量解析ではIFN score Bのオッズ比は 3.79(1.50-9.58)であった。また膠原病家族歴はオッズ比8.2であった。IFN score Aは有意なリスクとして残らなかった。

*El-Shebiniy YM, et al. Sci Rep. 2018. 8:5793
31のISGを以下に分類してスコアリング
IFN score A:”SLE”をRA, HCから分ける遺伝子、主にIFN-I (IFN-α, IFN-β, IFN-κ, IFN-ω)に反応する。
IFN score B:”SLEとRA”をHCからわける遺伝子、IFN-I 、IFN-II (IFN-γ), IFN-III (IFN-λ) すべてで反応する。

ひとこと:IFN score Bのみ、多変量解析でAI-CTD予測のリスクとして残ってきました。フォローアップ期間の影響もあると思いますが、IFN-IだけでなくIFN-II, IFN-IIIを含めた幅広いIFN responsesが膠原病発症に重要なのかもしれません。Jak-iの早期導入でこの過程に介入できるかが興味深いと思います。

2018年9月7日

Emmi G, et al. Adalimumab-based treatment versus disease-modified antirheumatic drugs for venous thrombosis in Behcet’s syndrome
Arthritis Rheumatol. 2018. 70:1500-1507.

70例の静脈血栓症(DVT, SVT)をきたしたBS症例をretrospectiveに検証。ADA n=35, DMARDs(MTX, CyA等) n=35で、vascular response達成率 ADA群 97.1%, DMARDs 65.7%と有意にADA群で高く、また最終確認時のPSL減量についてもADA群 23.1±13.1mg→3.6±3.4mg、DMARDs群 26.2±20.2mg→8.3±3.7mgと、ADA群で有意にPSLが減量されていた。
抗凝固薬の併用は結果に影響しなかった。

ひとこと:BSに伴う脳静脈洞血栓など致命的な部位の静脈炎は患者選択の段階で9例除外されています。既報(Desbois AC, et al. A&R. 2012. 64:2753.)によれば、BS静脈血栓症の死亡率はフォローアップ期間中央値4.75年で6.4%と高く、ADAの積極的な併用が必要な病態と考えられます。

2018年8月28日

Doria A, et al. Efficacy and safety of subcutaneous Belimumab in anti-double stranded DNA-positive, hypocomplementemic patients with systemic lupus erythematosus.(BEL112341)
Arthritis Rheumatol.2018.70(8):1256-1264.

P: 血清dsDNA抗体>30 U/mL, 補体価低値(C3<90mg/mL, C4<10 mg/dL)、SELENA-SLEDAI 8以上のSLE
I: Belimumab 200mg sc/week
C: Placebo
O: 52週時点でのSRI4 response rate

836症例を2:1でbelimumab/placeboに割り付け、SRI-4 responderは belimumab群で64.4%, placebo 47.2%(p=0.0014)とbelimumab群で有意に高かった。Secondary endopointの重篤な再燃(SELENA-SLEDAI flare index)はbelimumab群 14.1%, placebo 31.5%と差があり、ステロイド減量(25%以上または7.5mg/day以下)もbelimumab群20.7%、placebo 11.4%(p=0.0844)と有意な差を認めた。
belimumab投与で補体価は上昇がみられたとのことですが、抗dsDNA抗体価の低下はみられなかった。
 蛋白尿については、ベースラインで0.5g/day以上の蛋白尿を有した症例が、52週の段階でbelimumab投与群 54.5%, placebo 25.0%で0.5g/day以下に改善した。

ひとこと:活動性のある腎炎、NPSLEは除外された研究です。BLISS IVの研究で低補体、抗dsDNA抗体陽性がhigh responderとして挙がったことをうけて、対象を絞って研究しています(Van Vollenhoven RF. ARD 2012;71:1343)。臓器障害は軽いものの低補体のためにステロイドを減らしきれないような症例がbelimumabはよい適応かと思います

2018年8月6日

Liu Z, et al. The prognosis of pulmonary arterial hypertension associated with primary Sjogren’s syndrome: a cohort study.
Lupus. 2018. 27: 1072-80.

pSS-PAH症例29例の中国からの報告。SS発症年齢34.4 ± 11.1歳、PAH発症年齢 40.6 ± 9.0歳であり、1,3,5年生存率は80.2%, 74.8%, 67.4%であった。生存例と非生存例を比較したところ、年齢、罹病期間、血行動態に有意差を認めた。死亡リスクとしては、pSS発症からPAH発症までの期間(HR 1.102), cardiac index < 2 L/min/m2(HR 5.497)であり、免疫抑制剤の使用は死亡リスクを下げる結果であった(HR 0.110)。

ひとこと:免疫抑制剤使用が生存を改善させているデータであり、pSS-PAHはSLE-PAHに近い肺動脈炎などの免疫学的な機序で生じている可能性が示唆されますが、生命予後はSLE>pSS>>SScと議論されていますので、IVCYなどの免疫抑制療法の積極的な使用を考えてよいと思います。

2018年7月25日

Lewis MJ, et al. Autoantibodies targeting TLR and SMAD pathway define new subgroups in systemic lupus erythematosus.
J Autoimmun. 2018. 91; 1-12.

protein microarray(1543種類のヒト蛋白を含む)により、SLE 186例の血清を用いて新規自己抗原の検索を行ったところ、68種類の新規自己抗原が同定された。検出される自己抗体のパターンによりクラスター解析を行ったところ、SLE患者は4群に分類され、臨床病型との相関がみられた。
Cluster 1a La, TROVE2(Ro60)など、ANA高値、dsDNA低値、Raynaud, 肺病変、血小板減少と関連
Cluster 1b HMGB2, APOBEC2B1, IGF2BP3など、腎病変と関連
Cluster 2 LYN, MKNK2, RPL10など dsDNA高値、関節炎と関連
Cluster 3 VAV1, CLK1など ANA, dsDNA低値

ひとこと:表題のとおり、機能的に免疫に関連する蛋白が自己抗原として同定されています。SLEでも筋炎のように抗体プロファイルでサブタイプに分かれると興味深いですが、Cluster 1bがANA, dsDNAもそれほど高値でないにもかかわらず腎病変と関連するなど、臨床の実感とは異なる印象もあります。

2018年7月20日 番外編

Lopez-Oliva I, et al. Dysbiotic subgingival microbial communities in periodontally healthy patients with rheumatoid arthritis.
Arthritis Rheumatol. 2018. 70(7): 1008-1013.

歯周炎のないRA患者22人, 健常人19人の歯周組織の細菌叢を16S ribosomal DNAをMiSeqによりシークエンスして解析した。従来、RAと関連していることが示唆されていたPorphyromonas gingivalis, Aggregatibacter actinomycetemcomitansは、優位には検出されずまた2群間での差も見られなかった。一方、Cryptobacterium curtumはRA患者で特徴的に検出された。C. curtumはシトルリンを産生できるグラム陽性嫌気性桿菌で、RA病態との関連が示唆された。また、PICRUSt(Nat Biotechnol. 2013)により、メタゲノム予測を行ったところ、アラキドン代謝と脂質代謝に関連するpathwayがRA患者では強調された。

ひとこと:歯周炎とRAの疫学的な関連は報告(Chen HH, et al. ARD 2013など)がありますが、臨床的な歯周炎がなくてもRAでは歯周のMicrobiotaに特徴があることがわかりました。FDRなどのハイリスク群における研究結果が待たれると思います。

2018年6月26日

Genovese MC, et al. Safety and efficacy of upadacitinib in patients with active rheumatoid arthritis refractory to biologics disease-modifying anti-rheumatic drugs (SELECT-BEYOND): a double^blind, randomized controlled phase 3 trial.
Lancet. 2018. 23-29, June. 391:2513-2524.
DOI:10.1016/S0140-6736(18)31116-4

P: 生物学的製剤抵抗性のRA患者(csDMARD併用)
I: Upadacitinib(UPA) 15mg, 30mgを12週間 or 24週間 連日内服
C: Placebo
O: 12週時点でのACR20, DAS28-CRP<3.2達成率

12週におけるACR20はplacebo群28%, UPA 15mg群65%, 30mg群56%であった。DAS28-CRP<3.2達成率はPlacebo群14%, UPA 15mg群43%, UPA 30mg群42%であった。

ひとこと:Jak阻害薬のbDMARDs failureを対象とした同様の研究にORAL-STEP study(tofacitinib), RA-BEACON study(baricitinib)があり、bDMARDs無効例でもJak阻害薬の十分な有効性が明らかとなっています。本研究では開始後1wでのHAQやGAが測定されており、即効性についても報告されています。一方で、baricitinibと同様に静脈血栓、肺塞栓の有害事象報告があり、より大規模な研究が必要かもしれません。なお、Asian backgroundは、ほぼ含まれていない研究です。

2018年6月22日 番外編

Demoruelle MK, et al. Antibody responses to citrullinated and noncitrullinated antigens in the sputum of subjects with rheumatoid arthritis and subjects at risk for development of rheumatoid arthritis. Arthritis Rheumatol. 2018. Apr. 70(4):516-527. DOI: 10.1002/art.40401

RA(n=20), RA at risk subjects (FDR, 抗CCP抗体陽性)(n=41), 健常人から血清、喀痰を採取し、ACPAs、neutrophil extracellular traps (NETs)量を測定した。RA at-risk群では喀痰中に抗シトルリン化フィビリノーゲン(79%)、ビメンチン(75%)、ヒストン2B(42%)抗体等が検出され、RA患者とは頻度が異なっていた(それぞれ60%, 100%, 75%)。ACPA抗体価とNET(DNA-MPO complex)量には有意な相関がみられた。

ひとこと:ACPAが最初は関節外(肺)で産生されるという仮説の根拠として、喫煙者BAL中のシトルリン化抗原の存在、喫煙とACPA陽性RAとの疫学的関連や、RA患者およびRA at-risk subjectsでの喀痰内の抗CCP抗体の存在が先行研究として存在しています。また、Khandpur R et al.の報告(Sci Transl Med. 2013)では、NET中にシトルリン化ビメンチンが存在するとされ、また抗シトルリン化ビメンチン抗体により、NETosisが誘導されるpositive feedbackがあるとされています。

2018年6月11日

Indraratna PL, Virk S, Gurram D, Day RO. Use of colchicine in pregnancy: a systematic review and meta-analysis. Rheumatology (Oxford). 2018 Feb 1;57(2):382-387. DOI:10.1093/rheumatology/kex353.

妊娠中のコルヒチン使用に関するメタアナリシス。4本の研究が採用され、FMF, Behcet病が含まれていた。流産率はコルヒチン内服で低下し、胎児奇形率は変わらなかった。FMF患者内での比較ではコルヒチン内服・非内服と比較して出生体重、胎生週は有意差を認めなかった。

ひとこと:FMFによる腹膜炎が流産と関連しているといわれており、コルヒチンによる妊娠期の発作抑制は、妊娠継続に優位に働くと考えられます(Yasar O, et al. J matern Fetal Neonatal Med. 2014. 27:733-6のretrospective 46例も参照)。コルヒチン無効のFMFも存在しますが、FMFの妊娠については、Anakinraも有効である可能性があるようです(Ilgen U, et al. Eur J Rheumatol. 2017. 4:66-67)。

2018年5月14日

Charles P, et al. Comparison of individually tailored versus fixed-schedule rituximab regimen to maintain ANCA-associated vasculitis remission: result of a multicenter, randomised controlled, phase III trial (MAINRITSAN2). Ann Rheum Dis. 2018. On line ahead. doi: 10.1136/annrheumdis-2017-212878

P: 寛解導入でCRとなった新規発症のGPA, MPA
I: Tailored protocol(RTX 500mg 1回、以後3か月ごとにANCA陽性または末梢血CD19陽性細胞検出でRTX 500mg)
C: Fixed protocol, RTX 500mg 2回+6か月ごと3回
O: 28週までの再燃数、BVAS悪化
各群81例、再燃はFixed 9.9%, tailored 17.3%(p=0.22)で有意差なし。RTX投与回数はtailored median 3回とFixed 5回より少なかった。

ひとこと:MAINRITSAN1と同様に対象患者はGPA約7割、PR3ANCA陽性例が約5割となっています。末梢血CD19+B細胞の有無は再燃には関連がないようですが、naïve/memoryの分画は不明です。MGでも類似のtailored-protocolが試されていますが、CD27+memory B cellはMG再燃と相関があり、CD27+memory B cellの有無でRTX投与を決定しています(Lebrun C, et al. J Neuroimmunol. 2016)。

2018年5月7日

Saag KG, et al. Denosumab versus risedronate in glucocorticoid-induced osteoporosis: a multicenter, randomized, double-blind, active-controlled, double-dummy, non-inferiority study. Lancet Diabetes Endocrinol. 2018. On line first. DOI: https://doi.org/10.1016/S2213-8587(18)30075-5

P:PSL>7.5mg/day, 3か月以上(glucocorticoid continuing)またはPSL>7.5mg開始群(glucocorticoid initiating)
50歳未満は脆弱性骨折既往あり
50歳以上はT score -2以下、または骨折あり+T score -1以下
I:Denosumab 6か月ごと
C:レセドロネート5mg/day
O:12か月後の腰椎骨量の非劣勢
Denosumab群でlumbar spine, total hip, femoral neckの骨量はリセドロネート群と比較して優位に上昇がみられた

ひとこと:過去のRCT(Mok CC, et al.Bone. 2015. 75:222-228)でもステロイド使用者でビス剤からDenosumabへスイッチした際の骨量増加のエビデンスはあります。かなり骨折のリスクの高い群を対象としていますが、骨折予防をエンドポイントとした研究が待たれます。

2018年4月9日

Serris A, et al. Efficacy and safety of rituximab for systemic lupus erythematosus-associated immune cytopenias: A multicenter retrospective cohort study of 71 adults. Am J Hematol. 2018. 93:424-429.

SLEに合併した自己免疫性の貧血・血小板減少に対してのRTXの有効性を検証したフランス(autoimmunity and rituximab registry: AIR)の他施設コホート・後ろ向き研究。71例のうち、ITP 44例、AIHA 16例、Evans症候群10例、PRCA 1例。RTX有効性は86%, うち60.5%が完全寛解。61例の初回反応群について再燃は24例(39.3%)で、再投与で88.8%が改善を認めた。重篤な有害事象として3例で感染症を認めたが、死亡例はいかなった。

ひとこと:SLEに対するRTX使用についてはRCT (LUNAR, EXPLORER)の結果は不十分でしたが、試験デザインの問題点も指摘されています。2010年の同じグループ(French AIR)からの報告でも腎病変、血球減少等へのRTXの有効性が報告されており、症例の選択とRTXの用法を工夫することで、SLEの難治性病態の制御にRTXは有効な可能性が高いです。

2018年4月2日

Moulis G, et al. Efficacy and safety of biologics in relapsing polychondritis: a French national multicenter study. Ann Rheum Dis. 2018. On line first. DOI: 10.1136/annrheumdis-2017-212705

フランスの患者研究。RPCにBiologicsを使用した症例の転帰についてのレトロスペクティブ研究。41例のBiologics使用があり、6か月の有効性(response rate)は62.9%, 完全寛解率19%であった。Bio中止は73.3%と多く、感染症20.9%、1次無効34.3%、2次無効18.1%が原因であった。有効性に関する単変量解析ではMDS併存は有効性が低いリスクであり、鼻・耳介・胸骨軟骨炎、DMARDの併用は有効性を高める可能性があった(有意差なし)。

ひとこと:Bioによる完全寛解率は低く、継続率も十分ではありませんでした。TNF阻害薬のなかでは抗体製剤(IFX, ADA)に比べてETNの継続率が低く、IFX, ADAを選択するほうがよさそうです。TCZについては、感染症による中止率が高いですが、有効性は高い可能性があります。

2018年3月19日

Grayson PC, et al. 18F-Fluorodeoxyglucose-positron emission tomography as an imaging biomarker in a prospective, longitudal cohort of patients with large vessel vasculitis.
Arthritis Rhuematol. 2018. March.vol 70(3): 439-449, DOI: 10.1002/art.40379

大動脈炎(GCA 30, TAK 26)において、FDG-PETの有用性を検討するための前向きコホート研究。LVVのうち、67.7%がPETで異常所見ありと判定された。PETVAS>20をcut offとした場合、LVV活動性についての感度68%, 特異度71%であった。また臨床的に寛解にある患者のうち、PETVAS>20の群で再発率55%(PETVAS<20, 11%)と高かったため、寛解時の再発予測に役立つ指標となる可能性がある。

ひとこと:GCAのGWASとしては、HLA-DR, DQ, PTPN22, IL-17Aなどが知られていますが、最近plasminogen(PLG), P4HA2が新たに報告されています(Carmona FD. Am J Hum Genet. 2017, 100:64-74.)。血管のリモデリングや血管新生に関わる遺伝子であり、CRPでフォローしきれない血管局所の病態があるのかもしれません。

2018年3月12日

Nakaoka Y, et al. Efficacy and safety of tocilizumab in patients with refractory Takayasu arteritis: results from a randomized, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial in Japan (the TAKI study) Ann Rheum Dis. 2018. 77:348-354.

P: 高安動脈炎再燃例、PSL 0.2mg/kg以下
I/C: PSLを初期量の最低2倍以上に増量し、一旦寛解導入、1週間以上経過後にランダムにTCZ 162mg sc群, プラセボ群に割り付け。4週間後よりPSL減量(10%/week)
O: 再燃までの期間

各群18例ずつ割り付け、 per-protocolの結果でプラセボと比較して有意にTCZ群で再燃までの期間が長かった(HR 0.34, p=0.0345)。

ひとこと:定義にもよりますが本プロトコールではTCZ投与群でも再燃率が40〜60%と報告されており、実臨床における高安動脈炎に対するTCZの使用については更なるエビデンスが必要です。初発例にステロイドなしでTCZ 8mg/kg iv x 6mのTOCITAKA study(France)がon goingとなっています。

2018年2月26日

Grayson PC, et al. 18F-Fluorodeoxyglucose-positron emission tomography as an imaging biomarker in a prospective, longitudal cohort of patients with large vessel vasculitis.
Arthritis Rhuematol. 2018. March.vol 70(3): 439-449, DOI: 10.1002/art.40379

大動脈炎(GCA 30, TAK 26)において、FDG-PETの有用性を検討するための前向きコホート研究。LVVのうち、67.7%がPETで異常所見ありと判定された。PETVAS>20をcut offとした場合、LVV活動性についての感度68%, 特異度71%であった。また臨床的に寛解にある患者のうち、PETVAS>20の群で再発率55%(PETVAS<20, 11%)と高かったため、寛解時の再発予測に役立つ指標となる可能性がある。

ひとこと:GCAのGWASとしては、HLA-DR, DQ, PTPN22, IL-17Aなどが知られていますが、最近plasminogen(PLG), P4HA2が新たに報告されています(Carmona FD. Am J Hum Genet. 2017, 100:64-74.)。血管のリモデリングや血管新生に関わる遺伝子であり、CRPでフォローしきれない血管局所の病態があるのかもしれません。

2018年2月5日 

Wechsler ME, et al. Mepolizumab or placebo for eosinophilic granulomatosis with polyangiitis.
N Eng J Med. 2017. May 18; 376(20):1921-32

P: 最低4週間の治療を行ったが治療抵抗性・再発のEGPA
I: mepolizumab 300mg s.c. 4週おき
C: プラセボ
O: 寛解までに要した週数、36, 48週後の寛解率

Mepolizumab 68例、プラセボ68例との比較。Mepolizumab群のほうが、24週までの累積寛解率は28%(vs 3%)と高く、36/48週での寛解率も32%(vs 3%)と有意に高かった。再発率(/年)はMepolizumab群 1.14, プラセボ群 2.27と有意差あり。

ひとこと:Mepolizumab群でステロイド減量が可能な点は、難治性EGPA症例で望ましい選択肢と考えます。本研究ではANCA陽性例は10%、腎炎1%、肺胞出血4%と、AAVの要素が強い症例は少なく、EGPA病態を考慮した適応については今後の課題です。

2018年1月15日

Tjarnlund A, et al. Abatacept in the treatment of adult dermatomyositis and polymyositis: a randomized, phase IIb treatment delayed-start trial. Ann Rheum Dis. 2018 Jan;77(1):55-62. doi: 10.1136/annrheumdis-2017-211751.

P: 3カ月以上PSL+MTX/AZPで治療されているにもかかわらず疾患活動性のある筋炎患者
I: ABT iv, 2週のきのloadingを1カ月行った後、monthly投与
初期から導入(A群), 3か月遅れて(B群)を設定
C: 投与前と投与後6カ月もしくは上記A群、B群間の比較
O: primary outcome IMACS improvement

Primary outcomeの達成率は42%(8/19)でした。現在第III相に進んでいますが、ABT responder症例の特徴がわかれば、より有効な選択肢になるかと思います。

2017年

2017年12月11日

Taylor PC, et al. Baricitinib versus placebo or adalimumab in rheumatoid arthritis.
N Eng J Med. 2017. Feb 16; 376:652-662.

MTX不応のRAにBaricitinib 4mg, ADA 40mg, placeboを無作為割り付け、Phase 3。12wのACR20はBaricitinibで70%, ADA 61%, プラセボ40%とbaricitinibの有効性が証明された。SDAI寛解52wもBaricitinib 23%, ADA 18%とBaricitinibで高い傾向があった。

ひとこと:BaricitinibはほかにもPsoriasis, GCAやアトピー性皮膚炎などの治験が進んでいます

2017年12月4日

Stone JH, et al. Trial of tocilizumab in giant-cell arteritis.
N Eng J Med. 2017. July 27; 377(4):317-328

巨細胞性動脈炎251例、トシリズマブ皮下注射162mg 毎週・隔週、ステロイド26/52週中止で無作為割り付け。トシリズマブ週中止群で53〜56%の寛解維持率、プラセボ群だと52週の段階で14〜18%の寛解維持率。

ひとこと:Lancet の2016年の論文(vol387, p1921)ではTCZ打っている間は高い寛解維持率(85%)ですが中止後の再燃は多いようですので、維持療法としてのTCZは必要かもしれません。

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