免疫療法管理学講座
講座の概要
近年、サイトカインや細胞表面分子を標的とした「生物学的製剤」が開発され、種々の自己免疫疾患に対し、大きな成果を上げています。「生物学的製剤」治療が保険適応となっている疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬、ベーチェット病、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)と多岐にわたります。これらの疾患は、アレルギー・リウマチ内科、皮膚科、整形外科、消化器内科、大腸・肛門外科、眼科と多くの科でみられています。本講座は、症例数の多い関節リウマチおよび乾癬を主に扱っているアレルギー・リウマチ内科、皮膚科、整形外科が協同し、2013年8月に設立されました。
現在、関節リウマチに対しては、炎症性サイトカインであるTNF-αを抑制するインフリキシマブ、インフリキシマブBS、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、IL-6受容体を抑制するトシリズマブ、T細胞共刺激抑制剤であるアバタセプトの8剤が使用可能です。乾癬に対しては、インフリキシマブ、アダリムマブ、IL-12/23を抑制するウステキヌマブ、IL-17Aを抑制するセクキヌマブ、イキセキズマブ、IL-17A受容体を抑制するブロダルマブの6剤が使用可能です。そして新たに、免疫担当細胞の特定分子を標的とした「低分子化合物」としてJAK阻害剤(トファシチニブ、バリシチニブ)が開発され、関節リウマチに対し生物学的製剤と同等の効果を示しています。
「生物学的製剤」や「低分子化合物」は分子標的治療薬と呼ばれ、今後ぞくぞくと開発されていくことが予想されます。また、これら分子標的治療薬の適応疾患や対象症例はますます拡大していくことも予想されます。一方、これら分子標的治療薬は全ての患者に効果があるわけではなく、効果の程度も様々であり、重大な副作用も少なからず経験します。どのような患者にどの分子標的薬が効くのか、どのような患者にどのような副作用が出現するかなどを予見することは現時点ではほとんど不可能です。そこで、本講座では、各分子標的治療薬による免疫学的変化の解析やバイオマーカーの探索、遺伝子情報の検討を行うことで、個人個人に適した新規治療プロトコールの作成および新規分子標的治療薬の開発の基盤を構築することを目的としています。
専門外来
- バイオ外来(院内紹介)
2013年6月開設。主に関節リウマチに対し、分子標的治療薬投与予定および投与中の患者さんが対象です。関節の評価、分子標的治療薬導入前の内科診察、合併症の対応、臨床試験の遂行などを行っております。 - 乾癬性関節炎外来(院内&院外紹介)
2015年10月開設。乾癬性関節炎を含む脊椎関節炎の患者さんが対象です。関節評価、分子標的治療薬導入前の内科診察、合併症の対応、臨床試験の遂行などを行っております。 - 免疫疾患治療センター外来(院外紹介)
2017年2月開設。分子標的治療適応の免疫疾患および未診断の免疫疾患が疑われる患者さんが対象です。
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | |
---|---|---|---|---|---|
9:00-13:00 | 免疫疾患治療センター外来 | バイオ外来 井上 |
バイオ外来 神田 |
バイオ外来 神田 |
バイオ外来 立石 |
14:00-16:00 | 乾癬性関節炎外来 井上(第1,5) 立石(第2,4) 神田(第3) |
詳細は東大病院ホームページをご覧ください
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/patient/depts/meneki/index.html
研究活動
分子標的治療薬を用いた患者のデータベース作成と臨床検体管理およびそれらを用いた臨床研究を主体とします。具体的な研究内容は以下の通りです。
- 各種分子標的治療薬による免疫学的変化を、血液および組織(採取可能な病変部位)を用い、解明
- 分子標的治療薬の薬剤選択や臨床効果予測のための新規バイオマーカーの探索
- 臨床効果や副作用に関する予測因子や遺伝子情報の解析
- 「生物学的製剤」と「低分子化合物」の生体内の免疫学的変化の相違について、血液および組織(採取可能な病変部位)にて、解析
スタッフ
神田 浩子 | 特任准教授 |
立石 晶子 | 特任助教 |
井上眞璃子 | 特任助教 |
スタッフ
場所
内科研究棟2階 アレルギー・リウマチ内科303/304研