1. HOME
  2. 疾患解説
  3. 多発性筋炎・皮膚筋炎

疾患解説

多発性筋炎・皮膚筋炎

筋炎は横紋筋(普段、体を動かすのに使う筋肉の事です)に炎症が起きる膠原病の一種で、原因は不明です。皮膚症状のない多発性筋炎(PM)と皮膚症状のある皮膚筋炎(DM)に分かれます。筋炎は全国で約6000人の患者がいて、男女比は1:2と女性に多く、病気が発症する年齢は小児から高齢者まで幅広いのが特徴です。

筋炎の症状として筋肉の脱力や筋痛がありますが、主に四肢近位筋(胴体に近い部分、すなわち二の腕や太ももなどです)や首に起こります。自覚的に気づく症状としては車の乗り降りが難しい、椅子から立ち上がりにくい、腕をもちあげるのがつらい、枕から頭をもちあげるのがつらい、階段の登りがつらいといった事があげられます。筋痛には自発痛以外に、把握痛といって筋肉をつかむと痛くなる事もあります。その他に発熱、関節痛、疲れやすいといった症状が見られる事もあります。皮膚筋炎で見られる皮膚症状では、上まぶたが紫紅色に腫れるヘリオトロープ疹、指関節の背面が赤く固くなるゴットロン徴候が有名です。皮膚症状が筋症状に先行する事もあるので、皮疹から皮膚筋炎が疑われる事もあります。

筋炎の合併症としては間質性肺炎があります。筋症状に対して先行する事もあります。筋炎がほとんど認められない皮膚筋炎はclinically amyopathic DMと呼ばれ、致死的な間質性肺炎を伴う事があり、要注意です。当科には膠原病の肺病変を専門とする呼吸器グループがあり、間質性肺炎に対しても最適な治療を行っています。また、皮膚筋炎には悪性腫瘍の合併が高く、筋炎の治療前には悪性腫瘍の検索を行います。もし悪性腫瘍が発見されたら、その治療を優先します。なぜならそれで筋炎が改善する事があるからです。改善がみられない場合には、筋炎に対する治療を行います。

血液検査では、筋肉が炎症の結果壊れる事により筋酵素のCPKやアルドラーゼが上昇します。CRPや血沈のような炎症反応上昇を伴う事もあります。自己抗体では抗RNP抗体や抗Jo-1抗体に代表される抗アミノアシルtRNAシンテターゼ抗体が陽性になる事があります。抗CADM-140(MDA5)抗体陽性例は急速な間質性肺炎悪化のリスクとして知られています。診断の確定のためには筋電図や筋生検(筋肉の組織をとって顕微鏡で調べる事)を行います。他に、MRIにより筋肉の炎症の活動性を調べることもあります。また心臓、嚥下障害など多臓器にわたる合併症の精査も行います。

筋炎と診断された場合、まず入院による安静が必要であり、治療として経口ステロイド剤を用います。病気の改善に合わせてステロイドの量を減量していきます。ステロイドの治療にて改善が不十分な場合にはサイクロスポリン、シクロホスファミド、メソトレキセートのような免疫抑制剤を併用する事があります。大部分の方は治療により以前のような運動能力に回復しています。

この病気は生命予後は良好(10年生存率80%)ですが、発症から治療開始までの期間が長くなればなるほど予後が悪くなります。本項で述べたような症状に思い当たる方は、是非早めに当科外来を受診して、膠原病専門の医師にご相談下さい。

このページの先頭へ