疾患解説
抗リン脂質抗体症候群
全身の動脈と静脈に血栓ができやすくなる病気です。典型的には血小板が低かったり流産を繰り返したりすることで発見され、全身性エリテマトーデスと合併することが多い免疫の病気です。好発年齢は20代で女性に多い疾患です。
症状 | ・反復する流産(習慣性流産)を起こします。通常の流産は妊娠初期が非常に多いのに対して、抗リン脂質抗体症候群の患者は妊娠の中〜後期にも多く生じます。 ・比較的若年者での脳梗塞、一過性脳虚血発作が起きて手足がうごかない、しびれる、呂律がまわらない、肺塞栓による息苦しさ、深部静脈血栓症であれば足の痛みやある場所から先のむくみ、といった症状が起きえます。そのほか、多彩な臓器に血栓による症状を呈します。 |
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検査 | ・血液検査では、血液を固める作用のある血小板が少なくなったり、aPTTという血液凝固の指標が延長します。 ・リン脂質に結合したタンパクに対する抗体である抗β2-GPI依存性カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント、抗プロトロンビン抗体が本疾患に特徴的で診断に重要になります。 ・全身の動静脈に血栓症が生じるため、症状がでている部位に対して画像検査を行います。脳梗塞にはMRI、肺動静脈血栓症には造影CT、肺血流シンチグラフィー、深部静脈血栓症には超音波検査、造影CTなどの検査が必要です。 |
治療 | ワーファリンを用いた抗凝固療法、バイアスピリンによる抗血小板療法、またはその併用により急性期治療や慢性期の血栓再発予防を行います。全身の血栓症による多臓器不全をきたす最重症型の場合にはステロイドや免疫抑制剤を用いることもあります。妊娠中や挙児希望の際には、催奇形性のあるワーファリンの代わりにヘパリンを用いた加療に変更して治療を継続します。当科では産婦人科と協力してAPS合併妊娠への対応も行っております。 |